住宅の断熱性を示す「断熱性能等級」と「UA値」
住宅の断熱性能を示す指標には「断熱性能等級」と「UA値」があります。これらの数字が、建物の断熱性能を判断する目安になります。
それぞれについて解説します。
断熱性能等級とは
断熱性能等級とは、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品格法)によって定められた家の断熱性能を示す指標です。等級1から最高ランクの等級7まで、7段階に分けられます。
各等級の特徴を、次の表にまとめました。
等級 | 制定された年 | 求められる基準 |
---|---|---|
等級1 | 1980年 | 特別な規制なし |
等級2 | 1980年 | 旧省エネルギー基準で省エネレベルは低い |
等級3 | 1992年 | 壁や天井に対する一定レベルの断熱性能 |
等級4 | 1999年 | 壁や天井、窓、玄関ドアなどに対する断熱性能 |
等級5 | 2022年4月 | ・「ZEH水準」(※1)相当 ・UA値:0.40以下(1地域) ☆ジョイフルホーム標準仕様! |
等級6 | 2022年10月 | ・HEAT20(※2)のG2グレード相当 ・平成28年 省エネ基準よりも、暖冷房にかかるエネルギー消費量をおおむね30%削減可能なレベルの性能 ・UA値:0.28以下(1地域) ☆NOBECシリーズ標準仕様! |
等級7 | 2022年10月 | ・HEAT20(※2)のG3グレード相当 ・平成28年 省エネ基準よりも、暖冷房にかかるエネルギー消費量をおおむね40%削減可能なレベルの性能 ・UA値:0.20以下(1地域) |
※1:「ZEH水準」とは、「断熱等性能等級5」と「一次エネルギー消費量等級6」の両方を満たす住宅を指す。
「一次エネルギー消費量等級」とは、住宅が1年間に消費するエネルギー量によって4つの等級に分けられ、等級6は最高ランクにあたる。
※2:屋根や外壁、床、窓などの「外皮」と呼ばれる部分の断熱性能の評価基準で、G1からG3に分けられる。
2025年以降は、すべての新築住宅で断熱性能等級4以上が義務化されます。
これにより、2022年3月まで最高等級とされていた等級4は、最低ランクになります。
2030年にはZEH水準の省エネ性能が基準となり、等級5が最低ランクになるため、これから新築住宅を建てるなら等級6~7を検討するのがおすすめです。
参照:国土交通省「住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設」
参照:国土交通省「③住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度におけるZEH水準を上回る等級について」
UA値とは
UA値とは、室内と外の間で熱がどのくらい移動するのかを示す数値で、「外皮平均熱貫流率」ともいいます。数値が小さいほど室内から外へ熱が逃げにくく、断熱性の高い家であることを表します。
UA値の基準は地域ごとに設けられており、北海道や東北などの寒い地方では、より低い数値が設定されています。
北海道の基準値は0.46、関東から九州にかけた温暖な地域では0.87です。
■地域ごとのUA値
1地域(旭川) | 2地域(札幌) | 2地域(盛岡) | 2地域(仙台) | |
---|---|---|---|---|
UA値(W/m2K) | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 |
出典:国土交通省「【参考】住宅における外皮性能」
UA値がこの数値より高い場合、快適に暮らすための断熱性能は不十分であると考えられます。
家づくりでは、ハウスメーカーが提示するUA値を参考に断熱性能を判断しましょう。
UA値について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
「『UA値・C値・Q値?』お家の断熱性能を細かく解説!」
床・壁・天井に断熱材を入れる
外の熱は、壁や屋根からも伝わってくるため、断熱性を高めるには床や壁、天井に断熱材を入れる必要があります。以下は、建物の部位別に熱の出入りの割合を示した表です。
熱の出入りがある場所 | 【冬】室内 → 外 | 【夏】外 → 室内 |
---|---|---|
開口部(窓やドア) | 58% | 73% |
屋根 | 5% | 11% |
外壁 | 15% | 7% |
換気 | 15% | 6% |
床 | 7% | 3% |
出典:(一社) 日本建材・住宅設備産業協会「平成11年省エネ基準レベルの断熱性能の住宅での試算例」
夏場に外から入る熱は屋根からが11%、冬場は外壁や換気口から外に逃げてしまう熱が15%にも上っており、それぞれに断熱材を施工する必要性が読みとれます。
夏場の2階が暑かったり、冬場の暖房効率が悪かったりする場合、断熱対策が不十分であることが原因のひとつといえるでしょう。
断熱性能は断熱材の種類や厚み、施工方法によっても大きく変わるので、ハウスメーカーを選ぶ際は採用している断熱方法も確認しておきましょう。
窓や玄関などの開口部の断熱性を高める
家の中で最も熱の出入りがあるのが、窓や玄関などの開口部です。上記の表の通り、冬場は室内の58%の熱が外へ逃げてしまい、夏場は73%の熱が室内に入ってきます。
建物全体の断熱性を強化するためには、断熱性の高いタイプの窓や玄関ドアを選びましょう。
窓ガラスはペアガラスやトリプルガラス、サッシは樹脂製や木製が断熱性に優れています。
Low-Eガラスと呼ばれる窓ガラスは、特殊な金属膜でコーティングされており遮熱効果が高いので、断熱性を向上させるのに有効です。
玄関ドアも、お住まいのエリアに適した断熱仕様のタイプを選ぶのがおすすめです。
玄関前に風除室を設置すれば、ドアを開けたときに冷気が直接入らないため、室内の熱が逃げにくくなります。
気密性を高める
家の断熱性を上げるには、気密性も重要です。気密性とは、すき間を少なくして空気の出入りを遮断する性能です。
家の中には、開口部やコンセントプレートの周辺などにすき間があり、そこから空気が出入りしています。
気密性の高い家はすき間が少なく、空気が出入りしにくい環境なので、室内を快適な温度に保てます。
建物にどれくらいすき間があるのかを示す目安となるのが、「C値」です。
数値が小さいほど、すき間が少ない高気密の建物であるといえます。
2009年(平成21年)の省エネ法の改正で、C値の数値基準が削除されたため、現在は明確な基準はありません。
ただ、高気密住宅といわれる多くの建物のC値は、1cm2/m2以下です。
「C値=1cm2/m2」とは、床面積1m2あたりに1cm2のすき間があることになります。
床面積が40坪(132m2)の家の場合、すき間の大きさは132cm2になるので、はがき1枚分ほどのすき間があることがわかります。
気密性の高い家づくりをする際は「C値=1cm2/m2以下」がひとつの目安になるといえます。